Mさんは、60代の女性。造船所の食堂で長年働いてきました。
静かな、でも力強い彼女の人生には、数えきれないほどの試練と、深い感謝が詰まっています。
彼女がこの道を歩んできた理由、そして今の自分をどんな思いで振り返っているのか。
仕事に対する姿勢と、人生に対する心構えが、どこまでも温かい言葉で綴られています。
幼少期と家族 – 貧しさと夢
Mさんは、豊かな家庭に生まれ育ったわけではありません。
家が貧しく、若い頃から家計を支えるために働く必要がありました。
中学を卒業するとすぐに、家庭のために働きに出ることを決めました。
かつてパティシエになりたかったという夢もありましたが、その夢を追うことは叶わず、
現実と向き合う道を選びました。
「小さい頃からお菓子を作るのが好きだったけど、家のことを考えると夢を追っている
場合じゃなかった。でも、今思うと、パティシエになれなかったことは
無駄じゃなかったと思ってるんです。」
食堂で働き始めた当初、仕事は大変でした。
長時間立ちっぱなし、忙しい厨房の中で、手際よく料理を仕上げる毎日。
けれど、何よりも心に残っているのは、働いていた時間の中で見つけた「人とのつながり」でした。
仕事の中で見つけた誇り – 食堂での役割
造船所の食堂は、船員たちが働くために重要な場所です。
Mさんは、長年そこで食事を作り続け、何千人もの船員たちの「力の源」になってきました。
食事を通して、彼女は自分の役割の大きさを感じ、誇りに思うようになりました。
「船を作る人たちが元気でなければ、船も完成しない。
私が作るご飯が、みんなの力になると思ったら、どんなに疲れていても頑張れました。」
また、食堂での仕事を通じて、Mさんは多くの若い職人たちと接することができました。
若い世代の中には、まだ人生に迷っている者も多かったが、Mさんは彼らに、
家族や人生の大切さを教え続けてきました。
「若い頃は、仕事がすべてだと思っていた。
でも、今はもっと大事なことがあるって気づきました。
どんなに忙しくても、家族や仲間との時間を大切にしないと、後悔するから。」
親の介護と独身生活 – 苦しみと共にあった愛
Mさんの人生には、数々の困難が立ちはだかりました。
その中でも、親の介護は特に大きな試練でした。
近年まで、父親と母親が共に高齢で病気を患っていたため、Mさんはその介護に追われていました。
仕事と介護の両立はとても辛いものでしたが、Mさんは「家族を支えるのが当たり前」と、
どんな苦しみも乗り越えてきました。
「親が病気になってからは、心身ともにきつかったけど、
それでもどんなことがあっても支えなきゃいけないと思っていました。
仕事をしながらでも、親のことを考えると、何とかやっていけたんです。」
その親が他界したとき、Mさんは心にぽっかりと穴が開いたような感覚に襲われました。
長い間、ずっと一緒に過ごしてきたので、その喪失感は大きかった。
しかし、同時に彼女は親から受け継いだ「生き抜く力」を強く感じていました。
失った時間への後悔と、若者へのメッセージ
Mさんは時折、人生を振り返りながら「もっと自分を大切にしておけばよかった」
と思うことがあります。
かつて夢を追わなかったこと、過剰に働きすぎたこと、
家族や友人との時間を十分に取れなかったこと。
そのすべてが今となっては後悔の一部ですが、彼女はその後悔を今の自分の糧にしています。
「若い頃、夢に向かって突き進むことを避けたけれど、
もしあの時、勇気を持って自分の夢を追っていたらどうなっていたんだろう、
と思うことはあります。でも、それもまた一つの経験だと思っています。」
Mさんは今、若者たちに伝えたいことがあります。
それは「人生には無駄なことなんて一つもない」ということ、
そして「自分を信じる力の大切さ」です。
「私が言いたいのは、どんな小さなことでもいいから、
自分が本当にやりたいことを大事にしてほしいということ。
無駄に感じることが、あとになって大きな財産になるかもしれませんから。」
社会への思い – 小さな変化を積み重ねて
Mさんはまた、社会への思いも強く持っています。
若い世代には、現実に厳しいことが多いかもしれませんが、
それでも自分の手で何かを変えることができると信じています。
「社会がどう変わるかを待つのではなく、自分が変わるんだ、と思って働き続けてきました。
少しでも、世の中を良くしたいという気持ちはあります。
小さな力でも、積み重ねれば大きな力になるから。」
Mさんから若者へのメッセージ
「今、若い人たちがどんな道を選んでいるのか、私はとても気になります。
若い頃、私は夢を追いかけたかったけれど、結局はその夢を後回しにしてしまいました。
だけど、どんな選択をしても、後悔が残ることなんてないんです。
どんな道を選んでも、その先に自分がどんな人生を送りたいか、が大事だと思います。」
Mさんの言葉には、長年の経験と共に育まれた深い知恵が込められています。
彼女は、自分が経験してきたこと、感じたことを、
これからの世代に伝えることで、少しでも役立ちたいと考えています。
まとめ
Mさんは、造船所の食堂で多くの人々を支えてきた60代の女性。
彼女の人生は決して楽なものではありませんでしたが、その中で「誠実に生きる」ことの大切さ、
そして「人とのつながり」の尊さを深く理解してきました。
今、彼女が若者たちに伝えたいのは、自分の道を信じて生きること、そしてどんな選択をしても、
自分が納得する生き方を貫くことの重要性です。
#世代継承性#就職活動 #人生相談 #高齢者 #若者 #時代
コメント